木製二次曲面型枠(RC浴槽)　現場名：海極プロジェクトⅠ « 型枠と3D技術の専門工場株式会社キヤマ

型枠設計

木製二次曲面型枠(RC浴槽)　現場名：海極プロジェクトⅠ

現場名　レーベンリゾシアヴェスティブルー（海極プロジェクト）

■2011年7月　プロジェクトスタート

■2011年7月8日（金）プロジェクトのはじまりは一本の電話から
2011年7月初旬、「ホームページを見て連絡しました。」とかかってきた一本の電話からこのプロジェクトは始まる。電話の先は静岡県富士市の石切山タイル株式会社専務、石切山好行さん。後日お目にかかってから詳しいお話しを聞くことに。

■2011年7月11日（月）打ち合わせ
「はじめまして」の挨拶のあと、渡された資料はふたつ（以下、参照）。イメージパースを見ると普通のタイル貼りの浴槽のようである。特に難しい型枠ではないのでウチでなくても。。しかし、断面図を見てワカッタ。断面が360度変化しているのである。「うーん」と唸っていると、石切山専務から「こんなカタチの型枠、できるでしょうか？」の問いかけ。
「できます！」。即答。
と、返答してから頭の中でグルグルと考える。鋼製（鉄）型枠では360度断面変化したものはあまりにも手がかかりすぎる。ここは木製でいこう。

「洋風大浴場露天風呂　パース図」

「洋風大浴場露天風呂断面図」

■2011年7月12日（火）プロジェクト情報集め
まずは、現場がどんなところにあって、どのような方（お客様）が使うものなのか。またゼネコンはどちらで、最終クライアントはどなたなのか。可能な限りの情報（素材）を拾うことにする。

「レーベンリゾシアヴェスティブルー（海極プロジェクト）」
ホームページからの物件イメージ　http://www.leben.co.jp/search/umigiwa/index.html

「レーベンリゾシアヴェスティブルー（海極プロジェクト）物件概要」
ホームページからの物件概要　http://www.leben.co.jp/search/umigiwa/outline.html

■2011年7月19日（火）試作３Dモデル製作
お預かりした図面を基にしてコンクリート形状を３D（三次元）に起こしてみる。まずは形状の把握と共有。3DPDFデータを作成して関係者の皆さんに確認いただく。

「洋風大浴場露天風呂　コンクリート製品図（３DPDF）」

■2011年7月20日（水）ベースモデル採用、共有はGoogleサイトで
木製型枠の製作は名古屋にある株式会社堀江製凾合板所にお願いすることに。3DPDFデータをチェックしてもらい、製作の可否を確認。基本はOK。そして、小さなRの二次曲面部については、疑似的な曲面（多分割して多角形とする）として対応することで合意。問題は多角形の角度をどの程度に納めるかだ。もちろん、角度が小さければ（細かくすれば）小さいほど精度は上がる。仕上がり精度に対する許容範囲によって、予算と納期にも大きく影響してくる。悩ましいけれども解決しなければならない問題だ。
プロジェクトにGoがかかった場合には、細かなやりとりが必要になってくるだろう。特に三次元設計が絡んでくる場合にはデジタルデータの存在が大きくなる。三次元CAD（3D_CAD)データがすべての基となる前提から、ベースモデルの概念を採用することにした。ベースモデルとは、すべての設計（コンクリート製品、型枠製品、付属品製品）はひとつのモデルをベースにして派生させていくという考え方。今回のように外部に型枠製作を依頼する場合においてもターゲットモデルは唯一”ベースモデル”のみとなる。そしてこのベースモデルはすべての関係者の下で利用されることにもなっていく。ベースモデルを全員で共有する場所が必要になってくるのでその支度もしなくては。（後日、情報共有サイトを立ち上げることになった。今回は頻繁に情報交換が必要な株式会社キヤマと株式会社堀江製凾合板所の２者（社）間で行った。）

「情報共有サイト（サンプルサイト）」
Googleサイト　https://sites.google.com/a/kiyama.jp/u_project/home
今回のプロジェクトサイトの仕様は、GoogleAppsを利用して作成したもの。掲示板やカレンダー、ファイルストック用の書庫などプロジェクト進行に最低限必要な機能を持たす仕様とした。ここでは閲覧しても差し支えない内容のみサンプルサイトとして公開。

■2011年8月-9月　検討期間

■2011年8月31日（水）型枠の現場設置、説明はiPadで
石切山タイル株式会社（石切山さん）と最終形状、現場型枠設置業者の選定で打ち合わせ。
現場型枠設置については富士市の有限会社加藤工務店が担当することに。この日専務の加藤さんと初顔合わせ。
iPadアプリ（InventorPublisherViewer)を使ってコンクリート製品の概要、型枠の形状、脱型の方法等おおまかな説明をさせていただく。コンクリートの製品はこのようなカタチなので型枠はこのように作る予定。一つの型枠サイズはこれくらいがちょうどいいから、分割数はこれくらいにしよう。躯体側とのアンカーはこれくらいのピッチでセパの位置はこれぐらいがいいのではないか。と、iPadをのぞき込みながら皆が指でグルグルと回して説明をしながら決めていく。話が早い。この日、型枠の図面を見ることはほとんどなかった。

「洋風大浴場　Inventor Publisher Viewer用データ」
＊無料モバイルアプリケーション（Inventor Publisher Mobile Viewer）
iPad,Android Pad をお持ちの方は直接アプリケーション起動可能。

＊無料モバイルアプリケーション
お持ちのスマートフォンやパッドで３D表示・操作可能なモバイルアプリで、
ご自分の指先で自由に操ることができます。以下リンク先から入手できます。
App Store | Android Market

■2011年10月製作に向けディスカッション

■2011年10月13日（木）製作決定
石切山さんから携帯電話に連絡がある。朗報。予定していた洋風大浴場露天風呂以外に家族風呂も同時に製作が決定する。家族風呂のほうには二次曲面が含まれていないので扱いはし易い。さっそく３D化してPDFデータを配布する。やはり難関は洋風大浴場露天風呂の型枠のほうだ。

「家族風呂　コンクリート製品図（３DPDF）」

■2011年10月14日（金）- 10月28日（金）細部仕様決定へ
タイルの割り付け、ヌスミ（厚み）を考慮して洋風大浴場露天風呂の疑似二次曲面化（多角形化）を決定する。タイルサイズ（20mm角）からするとできるだけ小さな角度で分割したいという方向に流れる。次の画は分割数決定時に検討した原寸の比較図だ。円弧と弦との差が1mm程度に納めたいとの理由（その程度であればほぼ曲面仕上げまでもっていける）で型枠製作側の株式会社堀江製凾合板所とも連絡を取り合い120分割に決定する。最後の決定時に役立つのはやはり人間の感覚になってくる。原寸図というのは感覚を呼び覚ましてくれる大きな役割を担っていると思う。CADだけではモノは作れない。

「洋風大浴場露天風呂多角形平面比較図」

■2011年10月29日（土）現場打ち合わせ
湯河原の現場で関係者揃っての打ち合わせ。設備（照明器具、水栓、排水口）の配置や使用者が入水時に足をかける段差の高さ、平面形状など型枠との兼ね合いをディスカッションする。どうしてもやっておかなければならないこと（気になっていたこと）も行うことができた。それは、躯体の実寸計測。躯体図と実測の突き合わせ。（やはりやってよかった）

■2012年11月　承認

■2011年11月4日（金）承認図（製品）
先の現場打ち合わせ内容を踏まえて石切山さんが仕様書にまとめてくれた。それをもとに承認用の図面（これも３Dデータ）を作成する。家族風呂は変更なし。

「洋風大浴場露天風呂　コンクリート製品承認図（３DPDF）」

■2011年11月14日（月）承認（製品）
ふたつの製品について承認いただく。さっそく型枠の設計にかかる。承認図（３Dデータ）がそのままベースモデルとなる。これを絶対データとして扱うことに。株式会社堀江製凾合板所と平行してこのデータをもとにした型枠の三次元設計とシミュレーションをおこなう。型枠設計途中、CAD用PCがクラッシュするトラブルが起きた。データのバックアップを考えても先の共有サイトのようなクラウド機能がより重要になってくると思う。

■2011年11月21日（月）型枠設計完了＆承認申請
無事に型枠設計が完了した。出来上がった型枠とベースモデルを統合するシミュレーション。このシミュレーションでベースモデルと型枠の形状を重ねてダブルチェックする。更に型枠の組込方法や脱型順序をシミュレーションしながら事前チェック。特に有効だと思うのはiPadアプリ（InventorPublisherViewer)を使って様々な角度から眺めてみる作業。それもできるだけ多くの人たちで。型枠の組込みからはじまってコンクリートの回り込み具合、脱型の順序等々。色々なことに気がつく。
出来上がった家族風呂はこちら。

「家族風呂　型枠組込図承認図（３DPDF）」